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UTM:Unified Threat Management(統合脅威管理)

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1. UTMとは?:セキュリティの「十徳ナイフ」

UTM(ユーティーエム)とは、一言で言えば「あらゆるセキュリティ対策を、たった1つの箱(機器やソフト)にまとめたもの」です。

インターネットの世界には、ウイルス、不正アクセス、迷惑メール、危険なWebサイトなど、さまざまな「脅威」が存在します。これらを防ぐために、昔は以下のように別々の対策が必要でした。

  • 不正侵入を防ぐには → ファイアウォール
  • ウイルスを防ぐには → アンチウイルスソフト
  • 迷惑メールを防ぐには → アンチスパム

これらを個別に導入すると、お金もかかる上に管理が大変です。そこで登場したのがUTMです。 これ1台を会社のネットワークの入り口(ルーターの後ろなど)に設置するだけで、これら全ての脅威からまとめて守ってくれます。

わかりやすく例えるなら、「警備員、検疫官、郵便物の検査係、受付係」の仕事を、すべて一人でこなせるスーパー警備員のような存在です。

2. UTMに含まれる主な機能

UTMはメーカーによって性能が異なりますが、一般的に以下の機能がセットになっています。

  • ファイアウォール(Firewall): 外部からの怪しい通信をブロックする「関所」の役割。
  • アンチウイルス(Gateway Antivirus): ネットワークを通過するデータの中に、ウイルスが含まれていないかをチェックします。
  • IPS / IDS(不正侵入検知・防御): ファイアウォールでは防ぎきれない、より高度なハッキング攻撃などを検知して止めます。
  • Webフィルタリング(URL Filtering): 業務に関係のないサイトや、詐欺サイト、アダルトサイトなどへのアクセスを禁止します。
  • アンチスパム(Anti-Spam): 大量に送られてくる迷惑メールや、ウイルス付きメールをブロックします。

3. ファイアウォールとの違いは?

よく「ファイアウォールと何が違うの?」と聞かれますが、守れる範囲が違います。

  • 従来のファイアウォール: 「住所(IPアドレス)」と「宛名(ポート番号)」を見て、怪しいアクセスを拒否します。しかし、中身(ウイルス入りのファイルなど)まではチェックしません。
  • UTM: 住所や宛名だけでなく、荷物の中身まで開封して検査します。 そのため、正常な通信を装って侵入してくるウイルスも防ぐことができます。

4. 導入のメリットとデメリット

企業、特に専任のIT担当者がいない中小企業にとって、UTMは非常に強力な味方ですが、注意点もあります。

メリット

  1. 管理が圧倒的に楽: 1台の設定を見るだけで済むため、手間がかかりません。
  2. コストパフォーマンスが良い: コンピューターの台数が多い場合は、個別に機器を揃えるより安価に済む場合が多いです。
  3. トラブル対応が早い: 何かあった際、問い合わせ先が1箇所で済みます。

デメリット

  1. 「単一障害点」になる: UTMが故障すると、インターネットへの接続や全てのセキュリティ機能が一度に止まってしまうリスクがあります。
  2. 処理速度の低下: 1台で多くの仕事(ウイルスチェック、フィルタリングなど)を行うため、安価なモデルだと通信速度が遅くなることがあります。
  3. コストに注意:中小企業やコンピューターの台数が少ないオフィスでは逆に割高になる可能性が高い。

UTM(統合脅威管理)は、「手軽に、広く、深く」オフィスを守るためのオールインワン・セキュリティ対策です。 「セキュリティ対策を強化したいけれど、何から手をつけていいかわからない」「管理できる人がいない」というオフィス環境には、最適な選択肢と言えるでしょう。