CPUの機能を使った高信頼な記憶領域を生成する仕組み
VROC(ヴィロック)とは、CPUの機能を使って、複数の高速なSSD(NVMe SSD)を束ねて高性能・高信頼な記憶領域(RAID)を構築するインテル社の技術です。正式名称は「Intel® Virtual RAID on CPU」です。
これまでRAIDを構築するには、主に2つの方法がありました。
- ハードウェアRAID: 「RAIDカード」という専用の部品をPCに増設する方法。高価ですが、高性能で安定しています。
- ソフトウェアRAID: OS(Windowsなど)の機能でRAIDを構築する方法。手軽ですが、CPUに負荷がかかり、性能はハードウェアRAIDに劣ることがあります。
VROCは、これらとは異なる第3の方法と言えます。
VROCの仕組みと特徴
VROCの最大の特徴は、CPUにRAIDコントローラーの機能が内蔵されている点です。
従来のRAIDカードは、CPUとSSDの間に入ってデータのやり取りを管理していました。しかしVROCでは、NVMe SSDをCPUに直接接続し、CPU自身がRAIDの管理を行います。これにより、専用のRAIDカードが不要になります。
VROCのメリット
- 超高速: NVMe SSDはもともと非常に高速ですが、そのSSDをCPUに直結させるため、データの通り道(ボトルネック)が少なくなり、性能を最大限に引き出すことができます。
- コスト削減・省スペース: 高価なRAIDカードを購入する必要がありません。また、RAIDカードが挿さっていたPCIeスロットが空くため、他の拡張カード(グラフィックボードなど)を増設できます。
- 起動ディスクに設定可能: VROCで構築したRAIDボリュームからOSを起動(ブート)できます。これにより、システム全体を高速化し、かつ冗長性を持たせることが可能です。
- ホットスワップ対応: システムを稼働させたままSSDの交換ができる「ホットスワップ」に対応しています。
VROCの注意点
- 対応環境が必要: VROCを利用するには、対応するインテルのCPU(主にXeonプロセッサーや一部のCore Xシリーズ)と、対応するマザーボードが必要です。どのPCでも使えるわけではありません。
- ライセンスキーが必要な場合がある: RAIDの種類によっては、機能を有効化するために別途「ハードウェアキー」と呼ばれる物理的なキーの購入が必要になることがあります。
- RAID 0, 1, 10: 基本的に追加キーなしで利用可能。
- RAID 5: 多くの場合、追加のキーが必要。
- インテル製SSD推奨: 最高のパフォーマンスと互換性を得るためには、インテル製のNVMe SSDを使用することが推奨されています(他社製SSDでも動作しますが、一部機能が制限される場合があります)。
VROCは、専用のRAIDカードを使わずに、CPUの力でNVMe SSDの性能を極限まで引き出すための技術です。特に、サーバーやワークステーションで、高速かつ信頼性の高いストレージをスマートに構築したいプロフェッショナルユーザーにとって非常に強力な選択肢となります。